フランシス・オルセンさんの講演

以下、極めて不確かなメモ(かつ情報量ももっとあった)。

Two causes of Financial Crisis

●序
 オルセンさんは、カリフォルニア大学ロサンゼルス校の先生で、ジェンダーが専門。経済危機の原因をつくった人たちを見ると、男性ばかりであるところ、女性が経済の重要なポジションに入っていれば、結果が変わったのではないかとの議論がある。これついて、女性は男性とは異なり思慮深い傾向があるから女性が入ってくる価値があるとの主張がある一方で、男性が牛耳っている経済界に入ってくる女性は多分に男性的であるから、女性が入ってきても結論は変わらないとの主張がある。しかし、私は、いずれの主張も妥当ではなく、その中間に真実があると考えている。
●Basic set-up of (free-market) capitalism
 自己利益の最大化を図るこが全体利益の最大化となることが資本主義の基本原理であるが、当該システム自体に、その例外、すなわち、自己利益の最大化が全体利益の最大化とならない場合が内在的にビルトインされている。今般の経済危機は、その表れである側面がある。その点では、女性が入ってきても、結論は変わらないだろう。システム自体に内在された危険の現実化なのだから。
●U.S."masculinity"=risk/danger/violence
 一方、銀行員はリスクをとらず保守的でモテないとの印象が米国である。一方で、インベストメントバンカーはリスクをとるのでモテる。米国人の気質として、男性は、勝負に負けてでも、リスクをとるほうが、リスクをとらない退屈な人生よりもよいとする傾向がある。そういった、気質、価値観は女性にはないと思われるので、その点では女性が入ってくることの価値はあるだろう。

ジェンダー論の意義

 女性の地位向上にとどまらない。階層構造の打破という点で、被支配者の支配者からの開放という点で、多くが共通するからだ。

仕事と家庭

 女性の社会進出のためには、仕事と家庭のコンフリクトを減らす必要があるため、男性の仕事量を減らして、家庭を手伝ってもらうことが必要になる。そもそも、米国では10%の人が仕事をしたくてもできない状況であり(失業率)、80%の人が過労働をうったえている。仕事のシェア、適度な分配をなすことは、男性にとっても喜ばしいことなのではないか。そして、そのための、社会制度の変化として、Capitalismを一部変更するだけでよいのか、大幅な変更を必要とするのかについては議論が分かれている。既存のものを正しいと思いがちだが、その固定観念を打破し、理想の社会を考え、実現していくに際し、ジェンダー論は役に立つと思われる。
 もっとも、なかなか変わらない現実を前に、それを前提として、自分の人生を構築する、すなわち、諦めるという作業を女性は多くしてきたように思う。A(家庭)とB(仕事)のいずれかを選ぶことの反射として、他方を諦めるということになってきたはずだ。その際、重要なことは、別の選択肢を選んだ人を批判することではなく、そもそもの選択肢を高めていくような議論をすることであると思う。