東大ロー未修二年冬学期総括

正直もうめんどくなってきたが、過去三学期とも書いているので、今回も書いておく。数少ない誰かの役に立ちそうな記事だとも思うしね。全部書いたので、ここに一元化した。

上級民法(河上正二)

 「・・・みなさん、試験等お忙しいと思いますので、オアシスになるように努力します・・・」という挨拶で始まった、上級民法。担当は、河上正二教授。この科目は、先生ごとにやり方が異なるのが、しょーじクラスは、約6名1グループで発表2回+最終レポートだった。発表内容は班ごとにわりと異なるが、医療契約とか、ファイナンスリースとか、消費者契約とか、現代的契約を網羅的にやる感じ。基本的によくわかんないが、参考文献が提示されるので、それを読めばレジュメは作れる。俺は、あみだで負けて(あみだで負担から逃れようというスケベ心はやめた方がよいだろう。だいたい提案者が負けるし…)、一人で最後やったので死んだが、きちんと分担すれば一人当たりの負担もそこまで重くないと思う。
 なお、自分たちの発表のとき以外は、特にすることはない。発表班がレジュメをメーリスしてくれるので、それを印刷して、発表を聞くだけ。だが、ローに発表がうまい人なんてほとんどいないわけで、ほとんどの人が、レジュメ棒読み(しかもレジュメは長い)である。1げんであることも相まって、人知を超えた眠気が教室全体を覆い、冬眠に入る人も多い。次の倒産法の予習をシコシコやりつつ、疲れたら寝るという、極悪な生徒もたまにいる。しかし、オアシスだから、許されている。俺は、内職するほど堕ちてはいないが、集中力を保つほど強くもないということで、大半はぼーっとしていたように思う。
 ちなみに、8時30分の時点で教室には半分も人がおらず、35分の時点で先生が登場し、40分の時点で3分の2ぐらい人がいることになる。あまりに、人が減るので、1回だけ出席をとったんだが、そのとき俺はいなかった(自業自得系悲劇)。が、ま、いい思い出。授業は、先生の話は面白いんだが、発表でほとんど時間を使うので、面白い話は最後の数分しか聞けない。しかも、そのとき、生気を保っている一部の勇者しかそれを享受できないという罠。そういうオアシスであった。

上級行政法(太田匡彦)

 東大を代表するツンデレ教授の、まちゃひこ大先生である。教授になったという噂がなぜか俺の周りで浸透していたので、試験のときに、黒板に准教授と書かれていたのは、しょっぱかった。実際、今、教授なのか准教授なのかよくわからない。
 大先生の「デレ」部分については、上級生からの伝聞でしかなく、現時点では我々は「ツン」部分しか知らない。すなわち、極めて、Sな授業であった。まじめに人間関係を構築していれば、いわゆる書き起こしが上級生から回ってくるはずだが、そこに表記される「…(省略)…」の部分を見ては、みんなガクブルである。
 1人1論点ずつあたる。まだ当たってない人が優先的にあたるのは最初だけで、次の論点は必ずその後ろの人があたる。という行動パターンが判ると、生徒側も対応するわけで、行政法だけ自治組織的なものが創発されていた。具体的内容は書かないが、授業が開始15分前には教室前に長蛇の列ができていたとだけ書いておこう。
 内容は「超」高度である。しかし、期末試験との関連性はほぼない。なぜなら、クラス共通試験であるところ、コウケツ教授等はあまり進まないからである。東大のアカデミックな授業、「なかんずく」、司法試験とか飛び越えちゃう感じ、が味わえる、趣深い授業である。判例を「でぃすてぃんぐぃっしゅ・でぃすてぃんくしょん」する力が身につくだろう。なお、生徒は基本、泪目である。
 しかし、最近上級生から聞いた話では、上級行政法は、司法試験を飛び越えつつも、その方向は逸脱していないので、上級を理解していたら司法試験の論点は余裕でわかるとのこと。その意味では、やはり、ありがたい授業だったのだと思う。

上級商法1(M&Α)

会社法総合と閉鎖会社とM&Αから選ぶ必修科目。どれがいいのか?って必ず話題になるし聞かれることも多いので、それから書こう。
M&Α以外は伝聞なのだが実際に受けた人の話を総合すると、未修生はやはり会社法総合(なかでも藤田先生)がよいだろう。百選や補助プリを使いながら会社法の論点の穴を埋めてくれるようだ。一方、不可の危険がある人(再履の人、過去不可った科目が少なくない人)は閉鎖かM&Αがよいだろう。不可の危機に瀕していては内容うんぬんで判断する土台を欠くからだ。これらで不可ることはまずない。が、司法試験からかなり遠ざかる(正確には近づかないだが)ので、その点には注意が必要。
M&Αの内容はファイナンスの基礎+金融商品取引法の一部(インサイダー規制など)+会社法の組織再編である。ファイナンスでたまに数式がでるが、本文の数式はくそ簡単なので、理系だからといって得しないし、文系だからといって困ることもない。脚注にはやや難解な数式が展開されているがこれをニタニタ読むか、読み飛ばすかか、の違いがあるがたいした話ではない。講師は西村〜のカリスマパートナーの草野耕一先生である。彼は歌が好きなので章が終わるごとにエッセンスが詰まった替え歌を歌ってくれる(笑)。これはまじ。醍醐味。ちなみに、草野さんは共産党の志井さんと小中高大と一緒の大親友らしい(哲学は異なるが)。
なお、配布される教材は実務用なのか時にやたら難しいが、最後の問いだけちゃんとやれば試験はできる。

上級刑法(山口厚)

女の子から「あっちゃん」と呼ばれているご存知刑法界のスーパースターである。学部3年にして司法試験に2位合格したどうしようもない天才である。民法では内田貴先生という人が有名だったんだが、京大系の先生方もすごくね?など評価(って誰様やねんとも思うが)はまちまちだが、刑法界で彼がトップであることについて異論を聞いたことはない。
そんなスーパースターなんだが、授業は東大にありがちな「超越刑法」ではなく、我々凡人にも理解できる極めてベーシックなものだった。刑法の基礎を復習しつつ重要判例の論理展開を正確に把握する練習。未修の人は賄賂とか確実にやってないので学習のよい機会となる。
情熱には二種類ある。赤い情熱と、青い情熱だ。山口先生は青い情熱、つまり静かにしかし熱いものを持っていて、しかも授業が真摯かつ紳士的だから、みんな全力で聞いている。よく「容赦なく落とします」というが、彼に言われると、素直に頑張ろうって思えるんだよね。とてもよい科目だった。

民事実務基礎(森淳子)

裁判官教諭(じゅんじゅん)による要件事実と事実認定を学ぶ科目である。司法試験との関係でも実務との関係でもウルトラ大事な科目。裁判所訪問が2回あるので、任官希望の人もうはうは。裁判官の人って昼間あうと超まじめなんだけど(当たり前)、飲むとまじおもしろい。多忙な中、我々ロー生と飲んでいただき感謝の限りです。俺はこの科目のクラス代表だったんだが、裁判傍聴関連のとりまとめなど他科目のクラス代表よりかなり大変だったと思う。授業は類型別や問題研究(ともに神本)とほぼ同じだが、先生も執筆者の一人だからそんなもんだろう。おれは民法いみぷとやさぐれていたが、この科目でちょっとだけ希望を見いだした。民法の超基礎と、民訴の主張立証のとこの復習にもなる科目。とても大事な科目です。

刑事実務基礎(教官三名)

裁判官、弁護士、検察官の三教官の授業を交互に聞き、生理的な刑事実務の立体的理解を目指す授業。生理的、というのは通常の、という意味で、極めて特殊な状況を理論的に詰めていく上級刑訴(病理的刑事実務と比喩される)とは対極的な関係にある。基本科目刑訴、刑法→上級刑訴、刑法→刑事実務基礎という3点セットで、刑事系が理解できる仕組みになっている。これは、システムとして奏功しているように思う。
 実際、東大は憲法行政法などを含む公法系はとても教育システムがしっかりしているのだ。私法、とくに民法の講義数が圧倒的に少ないため、それが弱みとなっている。その削られた時間は何になっているかというと、各種発展科目である。発展科目の多さ(教授の層の厚さ)では圧倒的な強さを誇り、それがある種のウリであろう。東大はアカデミックな授業がよく指摘されるが(それは正しいが)、むしろ、発展科目の多さこそが最大の特徴であろう。その利益を享受する代わり、司法試験で最も重きをしめる民法は少ないが、そこは自学自習でできるだろう、という人に入学が許可されているということになる。そういう前提で選抜されたのは確かだが、自分が本当にその要件を満たしているのかは、今後の一年の努力にかかっている。
 話を戻す。が、あまり記憶がないw。検察教官のフルエさんは面白かったが、来年からドーシシャにいっちゃうようだ(定年)。裁判官は明らかに他クラスの山室教授の方がよい。なぜなら、うちの担当教員はレジュメをUPしてくれないからだ。しかも、試験は山室さんが作るため、山室レジュメはいずれにせよ必須アイテム。弁護教官はパッションすぐる。パッションのあまり、3回連続左前からあてたぐらいだ。左前の人、涙目。右後ろの俺らまじ余裕。パッションはパッションだからねー、パッションなんだよ。そんな感じ。

倒産法(松下淳一)

「まつじゅん」と呼ばれているインテリ系イケメソな先生。倒産法大好き。民訴もまつじゅんだった(とてもよい授業だった)が、倒産法はさらによかった。てか、民訴の質問に行ったりしたときも、倒産法は受講した人に損はさせない講義を行っていますと宣言してたし。そして、倒産法のときの、まつじゅんは、とても楽しそうだ。心から倒産法がすきなんだなーというオーラが、あったかい。ちなみに、倒産法の改正に携わった人なので、独自説はほとんどなく、通説が多い。対立する説があるときも、どちらかの説にのみ力を入れるのではなく、両説の理由付けまで言ってくれるので大助かりである。「まつじゅん」といえば、伝説的れじゅめなのだが、これで倒産法は司法試験まで大丈夫だろうと思われる。考え抜かれた、レジュメである。慶応等と違い、論文対策などを全くしてくれない(それを求めてここに来たわけではないので俺は不要だと思うが)東大にあって、ついていけば司法試験でも高得点がとれる稀有な授業であるので、受講される人は、彼の胸に飛び込んでいくとよいだろう。
なお、試験は、ちょwwwwここ聞いちゃうwwww的なところを聞いてきたりするが、現場思考で頑張りましょう。