石川啄木

 井上選抜、啄木五選。昨日のコメントから啄木についてちょっと調べてみた。選抜基準としては、感覚としかいいようがないけれど、内容のほか、リズムも重視している。どんなに他の要素がよくても、字余りや字足らずの歌は、好きではない(リズムがよいので気づかなかったがよく見たら字足らずじゃん、とかは可)。字数という制約の中でどれだけ、うまいこと表現するかというところに短歌や俳句の醍醐味があると思うので、そのルールは守ってないと、萎える。もっとも、「咳をしても一人」は、独創的すぎて好きだが、もはや字足らずの俳句ではなくて、別の何かな気がする。
 一つ目は有名すぎるやつ。われわれも将来口ずさむ可能性大です。2つ目は高校時代に聞いて、すごく胸に残ったもの。高校時代、気がつけば、親父より背が高くなっていて、気がつけば、母親の主張の矛盾点がすぐに分かるようになっていて。嬉しさよりも、とまどいや、焦りが強かった頃に響いた詩ですね。3つ目は、やさぐれ感がたまらない。4つ目、5つ目は光景が鮮やかに浮かぶよね。バンプの詩とも共通する素敵さ。4つ目はセクシーで、5つ目は風情があると思う。

  • はたらけど はたらけど猶ほ(なほ) わが生活(くらし) 楽にならざり ぢっと手を見る
  • たはむれに 母を背負いて そのあまり 軽きに泣きて 三歩あゆまず
  • 草に臥て(ねて) おもふことなし わが額(ぬか)に 鳥は糞して 空に遊べり
  • 朝の湯の 湯槽(ゆぶね)のふちに うなじ載せ ゆるく息する 物思ひかな
  • あさ風が 電車の中に 吹き入れし 柳のひと葉 手にとりて見る