白い巨塔(全五巻) by 山崎豊子

特徴

 主要な登場人物にキャッチフレーズ的な描写があり、それが繰り返されるので判りやすかった。例えば、財前教授は「精悍な目」、里見助教授は「油気のない髪」であり、財前又一は「海坊主のようにぬるりとした頭」など。また、各章ごとに、タイトルがついていないのも新鮮だった。全て、第n章という形で統一されている。

豊子

 後半から、医療訴訟がメインとなるのだが、かなり周到に、法律知識や医学的知識の予習をしていることが伺われる。法律は俺の専門なのでいいが、医学知識は、豊子が、判りやすく書いてくれているにも関わらず、かなり難しい。なんども、読み飛ばしたくなったwww。いやはや、豊子すげぇとしかいいようがない。おそらく、法律が専門でない人にとっては、法的な点でも「うぅ」と詰まることがあるかもしれない。読み飛ばす人の方が多いだろうが。

評価

 さすが、二度もドラマ化されるだけのことはあり、とてもよかった。依然、ハゲタカがよかったと書いたが、あれはあくまでも現代小説というやや薄っぺらさを伴っているところ、本作品は、胸にずっしりくるものがあった。どちらがよかったかと言われれば、即答で、白い巨塔と答えるだろう。感動が筆に乗らないのが残念だが、とにかく、相当よかったです。
 本作は、財前と里見という正反対の性格の二人を基軸に人間ドラマが描かれるが(優秀なのは両者共通)、こういう小説を読むと、やはり、財前要素と里見要素で人(特に自分)を分析したくなる。二次元平面状のどこに自分はマッピングされるのか。俺は、多分に財前に同情派であるし、財前要素が強いことは間違いない。が、将来の夢は何かと聞かれて「そりゃそうでしょというような理想論を、堂々と述べ、かつ実行できるような人間になりたい、そのために、道具として法律を学ぶ」と答えたように(ムービーとして残っている)、里見的要素も少なくないと自覚している。両者が並存してるんだろうけども、外から見たら、自分は、どっちよりにうつってんだろう?気になるところである。
 今日は、生協書籍部の最終営業日らしいので、豊子本を買ってきまつ。