親族相盗例(刑法)

【前提知識1】
刑法244条1項は、直系親族等との間での窃盗罪・不動産侵奪罪(←土地についての窃盗罪)を免除する旨規定し、251条・255条によってこの規定は詐欺・恐喝・背任・横領の罪にも準用されている。
【前提知識2】
横領と背任の区別は難しいが、学説としては「財産についての領得行為が横領罪であり、その他の背信行為が背任罪」とする見解がよいように思われる(西田各論242p)。一方判例は、以下のように区別をしている(同243p)。すなわち、

  • 背信行為の客体が所有権以外→背任罪
  • 背信行為の客体が所有権
    • 自己のための費消→横領罪
    • 三者の利益を図った
      • 本人名義で行われた→背任罪
      • 自己名義で行われた→横領罪

【事案】

  1. 被告人Xの娘が死亡→Xが孫にあたる未成年者Yの後見人に選任される
  2. Xは、Yの叔父夫婦と共謀し、Yの貯金口座から現金を引き出し生活費等に充てた
  3. Xを業務上横領罪で起訴

【争点】
未成年者の後見人となった親族にも244条が適用されるか
判例

  • 結論:適用されない
  • 理由:後見人は財産を誠実に管理する法律上の義務を負い、その義務は公的性格をもつから

【感想】
244条1項の法的性質については、政策説(この規定は違法性とか責任とかとか無関係と解する)が判例通説だが、責任減少説とか違法阻却説からでも説明できる気がする。まー、常識的に言って、なんも知らんし出来ん少年は悪くないのに、財産が減ったわけで、ばーさんが罰せられるのは当然な気がするので、判決結果には納得。