いつでも引力コンデンサー!

 最近、空がご機嫌斜めで、雨が突然降る。そして、少しでも濡れないように木の下を歩く。しかし、雨がやんだ後は、木の下を歩いていると、かえって濡れてしまう。葉に溜まった雫が、風でゆられた折に、落下するからだ。「しまった」と思うと同時に、いつも思うのは、「コンデンサー」である。
 コンデンサーは電気を流していると、板に電気がたまって、電池なくてもちょっと仕事できるしーみたいになるんだが、それが、雨が木に溜まって、しばらくしたら、雨やんでも雫落とせるしーとなるのと似ている気がするのだ。
 だが、コンデンサーは、最初はガンガン電流流れて、充電されるにつれて電流が流れなくなって、最後は全く流れなくなるのに対して、木の場合は、最初は雨を下に通さない(雨宿りできる)が、雨が降り続けると、だだ漏れする点では、正反対である。

 謎である。
 コンデンサーといえば、高校時代の物理の先生がすぐに思い出される(笑)。高校時代に物理を習ったのは、世界の岡多賀彦氏である。中1から微積分を用いた難しすぎる物理を展開したが、一方で、カルタと称してくそ簡単な標語を連呼するようになった。そのカルタの一つが「いつでも引力コンデンサー!」である。大学入試で、誘電体を引っ張ったら誘電体はどの方向に動くか?みたいな問題が出るので、必ず元に戻るんだぜ!ということを覚えるためのカルタである。てか、右に引っ張ったのに、右方向に力が働いたら(斥力が働いたら)、そもそも誘電体に安定つり合いはないのかよということになるから、引力が働くのはある意味常識的判断で判ることだが、とりあえず、先生はこれを強調していた。
 先生の授業は、予備校のあらゆる授業の上と下を行っていたように思う。どんな予備校も、あそこまで簡単なカルタを連呼したりはしない(入門講義でももうちょっと難しいことをやる)し、逆に大学になって見返しても結構難しいレベルのこともやらないだろう。予備校で習えることの多くは(理数系が強い灘生においては特に物理の関して)自分でできる範囲を越えることは少ないから、そういった普通レベルの上と下を授業でやってもらったのは、今になって思えばよい授業だったのかなと思う。
 が、もちろん、当時は、もうわかったよレベルの簡単すぎる授業+意味不明な難しすぎる授業ということで、生徒からも人気はなかった。特に、理科は高3までちゃんとやらないからね(高2までで主要三科目を終わらせて、高3で理科をやるのが定石)。でも、人気はなかったが、誰も本気で苛立つわけではなく、「意味ねえしwwww」という漢字で、和やかだった。・・・んだが、俺の卒業後、世の中は親の発言が強くなり、親たちからの反対で、恩師たる岡先生は、どっかに更迭されてしまったようだ。実に残念である。親は、高校を大学受験のための勉強をする場所だと思っているらしい。まぁ、そうかもしれないけど、1科目ぐらいちょっと変なのがいても普通じゃないか。しかも、物理。絶対、灘生なら自習で満点近くとれる実力をつけれるはずだ。先生がいみぷだが、あったかい目で見守りつつ、卒業する頃に、いみぷだった先生実はすごかったかもって思うのは悪くないと思う。

 と、長々と書いたのは、この更迭された恩師岡さんの授業がまさにいまの東大ローの授業の過半数を占めることに気づいたからなのですw。もうね、さすがに、純粋未修の俺でもわかったよ、というぐらい簡単なことを繰り返す先生から、あまりにも難しいことをやる先生までいると。そして、授業科目的にも、司法試験とはぜんぜん直結しませんと。でも、だからといって、岡先生を更迭したしょぼい親たちとは違って、「しほうしけんにやくだつことをしてくださーい」なんて誰も言わない。いや、言いまくってんだけど、全部ネタの一貫としていわれているように思う。本気で言ってる人いたらドン引きじゃないですか。どんなけ自分に自信ないんですかと、他力本願なんですかと。

 そういうわけで、授業を本気で聞きつつ司法試験の勉強もやってる猛者から、授業は流しつつ予備校で頑張る人までいるけれども、みんな、大学院では司法試験では図られない力(一応、20年後に役立つらしい)を養いつつ、司法試験は司法試験で頑張るぞという、いわば二束のわらじを履いて頑張っています。ので、東大ローの先輩、同輩、後輩は、ぜひぜひ司法試験も突破してってほしいなーと思います。あ、俺も!!