「東大のこと、教えます」 by小宮山宏

 高校生の読者も考えてか、会話口調の非常に読みやすい本だった。読者速度が遅い俺でも、2時間もあれば読める。東大のこと〜というタイトルだが、日本のことについての言及が多く、ためになった。これからまだ学問を続ける人(学士、修士、博士課程に進む人)におすすめかな。小宮山さんが強調していることをキーワードで書くと以下のようになる。聞いたことあるなと思ったら、卒業式でもいってるんだね。

  • 変換のキーワード
  • 皆へのメッセージ
    • 本質を捉える知をもて
    • 他者を感じる心をもて
    • 先頭に立つ勇気をもて

 その他、多様性についても何度も言及していた。俺は柏での研究をきっかけに多様性を重視するようになった。在日としての経験から、多様性を最も好きな言葉に上げた友達がいる。どのようなきっかけで気づくのかは人それぞれだが、大局的な視点に立つと、多様性の重要性に気づきやすいと思う。個体レベルの視点で見れば、多様性は単に摩擦の種だと評価されかねない。個レベルの利害を越えて全体として、すなわちシステムとして見たときに、各の性質が均質がよいか多様がよいかという話である。
 そうだとすれば、個レベルの行動規範としての自律分散協調のうちの「分散」とは、長いものに巻かれるな、簡単に迎合するな、個性を保てということなのかもしれない。そしてシステムレベルでの規範は、多様性の担保であり、具体的には、新しい個性の獲得と、既存の個性が潰れないようなインフラの整備ではないか。小宮山さんの考えからはややずれたかもしれないが、俺が組織を回す立場になれば、こういうことを規範にするだろなという感想でした。