週刊エコノミストの哲学特集より

西山雄三氏担当部分

  • フィヒテに始まるドイツ観念論は、理性による世界の統一的・体系的な把握を試みる壮大な哲学のプロジェクト。
  • ハイデガー)予測不可能な自分自身の死の自覚することが、日常の匿名的・没個性的な「ひと」というあり方を脱して、自らの本来的なあり方を自覚する契機となる。日常的な実存から離れて、自らの本来性に気がつく。
  • サルトル)実際に存在することが、あらかじめ定められた本姓に優先する。実存は本質に先立つ。先行する価値付けを欠いた人間は自由に自らの行動を選び取るなかで、孤独や絶望に苛まれる。存在感の空虚さこそが行動の出発点である。人間には自分の外から自分自身をとらえ直す可能性がある。人間とは絶えざる自己超越。
  • カミュ)人間の理性では割り切れない世界の実相と対峙するときに不条理が生まれる。ただ、世界の不均衡や矛盾が露呈した不条理の状況は、人生の隘路ではない。逆に、相容れない2つの項の真ん中になって世界を眺め直すチャンスでもある。

清水真木氏担当部分

  • ニーチェ)あらゆる価値は動揺し解体していく不可逆的な運命にあり、そのプロセスをニヒリズムという。価値の動揺に耐えられない「弱者」は、ニヒリズムを覆い隠すために新たな価値を考案しねつ造してきた。ニヒリズムの究極において、それを受け入れそこで価値を生み出すことができる者が「強者」である。
  • キルケゴール)いつでもどこでも誰にでも通用する「人間かくあるべし」というような一般的な、いわば道徳的な規定を引き受けても、人生を意義あるものにすることはできない。むしろ大切なことは、各人が自らの「内面」に立ち返り、「いま」「ここ」においてどのように生きるべきかをそのつど決断することである。